今日私は、今まで胸に秘めていた計画を実行する事にする。
その計画は 「サンタクロース、誘拐計画」
クリスマスには必ず現れる、あの髭じいさん、その名もサンタクロース。
「良い子のところにプレゼントを持ってくる」という噂を小さい頃に聞いた。
その日から、何をするにしても誰かに見られている気がしてたまらなかった。
たとえば、車が全然来ないのに赤信号。
信号無視をしてしまいたいところだが、誰かに見られている私は決してできない。
信号無視なんて、悪い子がすることだもの。
私は良い子になろうとした。
良い子の演技をした。
ずっと、ずっと見つめられているから、ううん、見張られているから。
そう、サンタクロースに。
そしてクリスマスの朝、誰にも言ってなかったのに、私の一番欲しかったものが部屋の片隅に置いてあった。
嬉しい感情よりも「なぜ?」という不安な感情が支配した。
やっぱり、どこかで見張られているんだ。
でも、いったいどこで??
サンタはどこで私を見張っているのか。
学校に行く道、教室、家、部屋の中・・・。
そして何年も悩ませれることになる。
ついに私は、サンタに手紙を書くことにした。
「拝啓 サンタクロース様
私はいつも良い子でいます。なのでもう私の後をつけないでください」
手紙をポストに投函して2日後、サンタから返事が来た。
「こんにちは。あなたが良い子なのは良く知っています。だってずっと見てきたから。
これからも、良い子のあなたをずっと見ています。大好きだから」
『ストーカー・サンタクロース』
もう疑いのない事実だ。
そして今日、実行する。
まずは、サンタを見つけて、捕まえなくてはいけない。
あんなに見張られているのに、実際に彼にあった事がないのは一番の難点だ。
サンタクロースがどんな顔をして、どこに現れるのか。
どうやって、見張っているのか。
自分の部屋の明かりを見つめながら、ジッと待つことにした。
まだサンタは現れない。
今日はクリスマス・イブ。
きっと姿を見られるとしたら今日。
なぜか変な確信があった。
雪が降ってきた。
ホワイトクリスマス。
まだサンタは現れない。
「富田さん?」
振り向くとそこには、彼。
彼とは、私がサンタクロースに手紙を書いた頃からの付き合いで今年で2年目になる。
「なにしてるの?こんなところで」
「えっと・・・。」
「もしかして、待っててくれた?寒いでしょ、部屋に入ろう」
「・・・うん」
「でもなんで、僕が今日来るってわかったの?」
まさか、有名なサンタクロースを捕まえようとしてたなんて言えず、曖昧に微笑む。
そして彼と一緒に、温かい我が家へと帰っていった。
メリー・クリスマス
お願いサンタさん、もうプレゼントはいりません。