遠い遠い昔、眠りの国という国に2人のお姫様がいた。
一人は心の優しいお姫様。もう一人は残酷なお姫様。
2人が16になったある日、空中にこんな紙が舞った。
『眠りの国の姫の花婿候補を募集。我こそと思う者は満月の夜、城に集まれ』

眠りの国の国王は国王にしては変わり者だったので、年齢も身分も一切関係なく花婿候補を集った。
そのため、続々と男という男は下は3歳から上は83歳まで、またいろんな肌の色の男達が城を目指し、満月の夜には先が見えないほどだった。

「お姉さま、あれは隣国の王子様じゃないかしら?」
「そうね。あのお方もお見かけした事があるわ」
「まぁ、あそこにいるのは卑しき者よ。嫌だわ、お父様、あのような方まで御呼びになって」
「そのような事を言ってはいけないわ」
「お姉様はいつもそうね、まぁいいわ。それよりお父様がどうやって選別されるか知っています?」
「……」
「これはこっそり聞いた事なんですが、眠りの薬を使用するらしいですわ」
「お父様らしい余興ね」
「でしょ?でもそれだけだと面白くないので私―」
笑みを浮かべた姫は、この世で1番綺麗だった。



「皆のもの、よく集まってくれた。今日が約束の満月の夜。今から花婿を選別したいと思う。まず―」

国王は一人ひとりに眠りの小瓶を手渡した。
「今日これを全て飲み干し、夢に姫が出てきた者は明日城に参れ」

心の優しい姫は、そのほとんどが眠りからさめない毒薬だと知っていた。
残酷な姫が国王の目を盗んで毒を入れたのだ。
心の優しい姫は止める事ができなかった。なぜなら満月の朝、飲んだジュースため声が出せないでいたから……。
もちろん犯人はもう一人の姫君。


つづく