今日、家の鍵を持って出るのを忘れてしまった。

家に帰るまで気づかず、階段を登るにつれて昨日のことが鮮明に思い出された。

昨日使って、たぶん、いや、絶対にテレビの上に置いているはずだ。


やっぱり、鍵がない。


玄関のノブを回してみるが、開かない。

チャイムをして見る。

・・・。

誰も帰ってきていない。


セミが忙しなくなく中、私は一人

家に入れず、朝からやり直したい気分になる。


1mもしないこのドアの向こうに、鍵があるというのに、入れない。


ふいに家の中から電話がなった。

誰も取ることのない電話は、虚しく鳴り響き、そして停まった。


セミの声にイライラする。



玄関のところでもう何分経っただろう。

まだ家族はかえってこない。


鍵があったら今ごろ、冷たいアイスでも食べていただろうに。

ついてない。



待っている間に上の階の住人が行き来しては通り過ぎていく。


あぁ、この小さいドアの向こうに世界が広がっているというのに。

私は海原にぽつんといる小船のような存在だ。


一つの鍵がないという如きで、こんな気持ちになるなんて。

こんなにも自分の部屋が恋しく思ったこともないだろう。




そして数時間後、やっと家に入れることとなる。

明日は絶対忘れないぞ。

硬く心に誓った12の夏。



po