磯のにおいがする。
帰ってきたんだ。
待ちわびていたように、リンのそばに友人たちが集まってきた。
「体、大丈夫だった??」
「ひどい事されなかった???」
いろんな質問が飛び交う中、リンはまるで何事もなかったように歩き出す。
「うん。心配かけてごめんね。私、大丈夫だから!」
「ねぇ、ねぇ、魔女ってどんな感じだったの?」
「・・・・・。」
(この分だと、後何日間かは質問攻めかなぁ。トホホ・・。)


~♪諦めたくない  歩いていく
~いつもそこにある空のように♪~
「だいぶん歌いこんだんや。」
「!!」
背後から急に声をかけられた。トキ・・・か。
「そう?そう思う?もうね、魔女のヤツったら人魚使い荒くて、仕事ばっかだったのよ。で、歌でも歌ってなきゃやっていけなくて練習したの。」
「そうなんや。」
「うん!でもトキに言われるとなんかうれしい!本物じゃん!っ~感じがするぅ。」
テレからなのか、いつもよりもトキの機嫌をとっている。
トキは気づいたものの、まんざらではないようだ。
「・・。なぁ、なんかあった??」
「え??」
「海上に行った日から、リンの様子がおかしいからさ。」
「・・・。そ、それは・・・。ほら、あれよ。見つかりそうになって焦っていたからじゃない??」
「・・ならいいんだけど。」
今も違うと言いたかったトキだが、、これ以上は何も話さないと感じたのか、それ以上は聞かなかった。
さすが、トキ。するどいな・・。
たしかにあの時以前の私と、今の私。どこかが違ってる。

「ねぇ、トキ、めちゃくちゃ会いたい人っている???」
「?え??」
「会いたい人」
(突然何を言い出すのかと思えば。会いたい人??)
「う~~ん、いるかなぁ~。」
(会いたいやつにはもう、こうして会えてるし。お前以外に会いたいやつなんていない。)
じっっと見つめるリンを感じて、ふとわれに帰る。
「いないかな。」
「そっか」
「・・・なに?リンはいるんや。」
一瞬、目がきらっと光った。
(なんだ、リン??)
「・・・ん?聞いてみたかっただけ」
(なぁ、リン、それって!)
話しているリンの瞳の中には、今前に立っているトキではなく、違う誰かが・・・。
「リン!!」
「!?」
いたたまれなくて、トキはリンを抱きしめた。




触れたい。
触れたい。
感じたい。
そして、奪いたい。



どうしよもなく彼女に触れたい衝動にかられ、いや、彼女をメチャクチャにしたかったからなのか。
気がつくとトキはリンを抱きしめていた。
「なななななっ、なにするんだよ!!トキ!」
「・・ごめん、こんなことするつもりじゃ・・・。」
「わかった!わかったから、・・・・!!」
言葉を発する機能を奪うかのように、唇を奪っていく。ゆっくり、そして確実に口の中を犯していく。 
「リ・・ンッ・・」
唇から開放されると、耳元につぶやくようにトキの声が聞こえてくる。
リンはどうしようもない不安にかられながらも、それでも落ち着けと自分に暗示をかける。
「・・・。大丈夫??」
まだ息が荒いトキは答えられず、ギュッと目をつぶりながらも、うなずいた。
「・・・・ごめんな。」
「・・・うん。。」


会いたい。
会いたい、会いたい、会いたい、会いたい。

会いたい気持ちが溢れてくる瞳の中で、彼を思った。

「あの人に・・会いたい。」

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