あの日、帰ってからとりあえず大変だった。
海上での出来事は、彼女にいつもの冷静さを失わせていたらしく、一度もばれた事のない掟破りが見つかってしまった。
掟を破ると海底深い「死の海」に住んでいる魔女の元へ送られる事になっている。
リンもその「死の海」へと送られる事になった。

「リン・・・・だからあの時、歌の練習しろって、言ったのに・・。」
「もう、しょうがないじゃない。過去には戻れないし・・・」
「みんな心配してるんだよ?」
「わかってる・・・。ごめんね??」
サイは「あの時」を連発し、自分を責めてるようでもあった。

「なぁ、リン、こうなったのはお前の責任なんだぜ、これからはもっと自粛してくれよな。」
「アキラ、そこまで言う事ないよ。」
「何言ってんだよ、お前だってそう思うだろ!」
まぁまぁ・・と2人をなだめつつ、今度はもっと上手くやろうと決心する彼女。
そして、もう行こうとした時、背後から聞き覚えのある声。

「おい!」
「!何?トキまで見送りに来てくれたの?」
整えられた顔立ちが、少しだけ、いがむ。
「まで、ってなんや!今年がどんな年かわかってたん?」
「わかってるわよ!・・・わかってましたぁ~。」
愚痴愚痴言うと、そのほっぺたをギュッとつねってトキは言った。
「・・・・。早よ帰って来ぃ・・やっ!!」
「っっ!!・・・。言われなくても、わかってるわよ!バァ~~~か!」
リンは悪態をつきつつ、人魚の地を後にし、深い深い海へと沈んでいった。


「しょうがないね、リンは」
「ほんとバカだよな。」
「・・・。」
リンの行った先をジッと見つめていたトキに2人は声をかけるが、トキの想いはここにあらずのようだった。


「・・・・早よ、帰ってこいよ・・・。」

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