泡の匂い。
水の音が聞こえてくる。
大きなバスタブの中で揺れる2つの影。


目の前に横顔のあなた。
そして、かしこまったまま座っている私。
泡風呂にしたせいもあって、胸まで浸かっていると相手には見えない。
ついさっきまでお互い触れ合っていたのに、なんだか恥ずかしい。ギュッと座りなおす。
そんな私の気持ちを知ってか、知らずか、3歳年下の彼、成宮謙一はずっと横を向いて、こっちを見ようとしない。

後悔してる?
してない?
どっちの顔なの?

聞きたいけれど、聞けないでいる。
簡単な事なのかもしれないけど、やっぱり・・・。

バスタブの中の二人。
同じ場所にいて、同じ時を過ごしているのに、同じ気持ちなのかわからない。

やっぱり、成り行き?勢い?

メビウスの輪ような答えのない質問を、無言で彼に投げかける。
(遊びですか?)


打ち上げ後、気がついたら2人とも泥酔状態。
家が同じ方面だったこともあって、一緒にタクシーに乗り込んだ。
で、気がついたらホテル。
ううん、気がついたらなんて変だよね。泥酔だったけど記憶ははっきりしてる。
タクシーに乗り込んだあと、帰りたくないオーラーを出していたのは多分、私の方。
彼の手を自然と握っていたのは、私。

「・・・運転手さん、そこで止めてください。」

タクシーの中で沈黙を破ったのは彼。


魔が差したの?


「・・・山田さん、」
急に名前を呼ばれて、パッと顔を上げる。さっきまで耳元で囁いていた声と同じとは思えないほど、冷たい囁きで体が冷えてくる。

やっぱり、後悔してるのね。


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