今日は天気もいいし、目覚めも良かった
こんな日は出かけよう!

友達と一緒もいいけど
一人でブラブラするもの楽しいし、気持ちがいい
今日は好きなところに行ってみよう


家族連れ、恋人同士、友達連れ
いろんな世界が広がっているこの街並の中
私は一人
でも、ずっと世界は広がっていて
どこへ繋がっているのだろう
世界を一人で行くのも乙なもの


「お得ですよ~」
「本日よりバーゲンセールを開催しております」
蟻が群がっているような店を後にして、お気に入りの雑貨屋さんへと足を滑らせる。
店内に入ると、心地いい曲が流れてくる。
私の好きな雰囲気。
ティーポットや、カップを見ながら店内を進むと顔見知りの店員さんにあった。

「こんにちは。いらっしゃい、今日は一人ですか?」
はい、今日は天気がいいから。
ヘンな理由かなと言って思ったら
「わかりますよ、天気がいいと、どこかに出かけたい気分になりますよね。僕もよく一人でブラブラしてますよ。でも、いつも忙しくてほとんど出かけられないのが、現状なんですけどね」
なんて答えが返ってきて少しホッとして、顔を見る。

突然胸が高鳴った。
まるでスポットライトを浴びて、時が止まったように…。
そう、私の世界は一瞬にして真っ白になった。
「あ、これですか?最近してみたんです。似合いませんか?」
私がジッと見ているので、ちょっと困ったようにその人は笑って言った。
いえ、そんな事ないですよ。小さく告げる。

喉がからからに渇いている。
そして胸がドキドキしている。
どうしたんだ?私。
「ゆっくり見ていってくださいね」

結局何も買わずに店を出た。
駅へ続く道を歩いていると、聞き覚えのある声に呼び止められた。
「ひとみ~、偶然!」
由香だった。
白いコートに黒のブーツが良く似合ってる。そして隣にいるのは
「こんにちは。今日は一人で買い物ですか?」
そう、彼。
絶対に好きになっちゃいけない人。

屈託のない笑顔を向けてくる2人に少し動揺と、苛立ちを感じて、いつもより早口になる。
「ほんと久しぶり、元気?せっかくだからどこかでお茶でもって言いたいところだけど、友達待たせてるんだよね。また今度一緒して~」
残念と話す2人に手を振り、そして逃げるように駅に向った。

そして気が付いたんだ。
好きになってはいけない人の耳にもピアスが光っていた事に。

わたしって…バカッ。
世界はまだ一人のまま…。