「ねぇ、あいちゃんはどうしたい?」

それは私にしか聞こえないような、呪文のような言葉だった。

アイチャンハドウシタイ

私、私はどうしたいの?このまま黙ってここにいる?
先輩とホテルに帰って話し合う?
「ごめん」なんて思ってないけど、謝る???
それとも…。

潤が私のそばに来て異変に気づいたのか、先輩が冷ややかな目で潤を一瞥した。
「…知り合い?」
「え…」
首を振ろうとした時、今度は聞こえるようにこういった。
「俺達、夏からのお知り合いなんです~ぅ。ね、あいちゃん」
「本当なのか、愛?」
ううん、知り合いなんかじゃない。こいつは初対面にもかかわらず、ずうずうしくて、人のことなんてどうでもいいような。
ただの変質者。
でも…
心の中で何か叫んでる。

ドウシタイ??

気がついた時には走り出していた。
行きかう人が振り向くくらい、走っていた。
私はただ、逃げたかったんだ。